連載企画
【ボールのないサッカーの話 #1】ボールを蹴れる場所は、誰がつくっているのか
皆さま、こんばんは。
カシマアカデミー代表の川上翔太です。
今回から、「ボールのないサッカーの話」という連載を始めます。
ボールが動き出す前にも、止まったあとにも、サッカーは続いています。練習や試合では見えにくいその時間には、クラブを支える人の仕事や判断、地域との関わりがあります。
この連載では、そうした「ボールのない時間」に目を向けます。私自身、まだ気づけていないことや、答えを出せていないこともあります。だからこそ、一つずつ考えながら書いていこうと思います。
最初に考えたいのは、私たちが普段使っている練習場所のことです。
練習が始まると、私たちの目は自然とボールを追います。
選手がどんなプレーをしたか。コーチがどんな声をかけたか。今日の練習で何ができるようになったか。サッカークラブにいると、私たちはどうしても、ボールが動き始めてからの時間を見ようとします。
けれど、選手が最初の一球を蹴る前に、その場所はすでに誰かの手によって用意されています。
利用する時間を調整する人がいて、必要な連絡をする人がいる。安全に使える状態かを確かめ、道具を準備し、選手を迎えるスタッフもいます。家庭では、練習に間に合うように一日の予定を組み、子どもを送り出してくれています。
どれか一つが欠けても、私たちが「いつもの練習」と呼んでいる時間は始まりません。
グラウンドや体育館があれば、サッカーができるわけではないのだと思います。
場所を貸す人、使える状態を保つ人、そこまで選手を送り届ける人。近くで活動を見守る人もいます。いろいろな人の判断や仕事が重なって、初めてボールを蹴れる場所になります。
クラブを運営していると、場所を確保できた時点で安心してしまうことがあります。予定表に練習会場が入れば、準備が終わったように感じてしまう。でも、本当はそこからです。
使う前に確認することがあり、使っている間に気を配ることがあり、使い終わったあとに戻すものがあります。自分たちの都合だけで場所を使えば、次に使う人や、周りで暮らす人へ負担を残してしまいます。
地域の中でクラブを続けるということは、練習場所だけを切り取って借りることではありません。その場所に積み重なってきた使い方や、周囲との関係も一緒に受け取ることだと考えています。
選手に場所を大切にしてほしいと伝える前に、まず大人である私たちが、その姿を見せられているか。使わせてもらうことを当たり前にせず、連絡や片づけまで丁寧にできているか。振り返ると、まだ十分ではないところもあります。
大きな恩返しを、すぐに用意することはできません。
それでも、気持ちよく挨拶をする。使ったものを元に戻す。次に使う人が困らない状態で場所を渡す。地域の人から声をかけてもらったら、クラブの側からも声を返す。そうした小さな行動なら、今日からでも続けられます。
ボールを蹴れる場所をつくっているのは、クラブだけではありません。
私たちは、多くの人から場所と時間を受け取って、サッカーをしています。そのことを忘れず、受け取ったものを次の人へどう渡していくか。ボールが動いていない時間にも、クラブが考えるべきサッカーがあります。
この問いを、一緒に考える仲間へ
ボールを蹴れる場所は、誰か一人ではつくれません。クラブも同じです。
カシマアカデミーでは、子どもたちと地域のこれからを一緒につくる仲間を探しています。完成した答えを持っている必要はありません。私たちが大切にしていることに少しでも重なるものがあれば、まずは気軽にお声がけください。
同じ問いを持つ仲間と、明日も次の一歩に挑戦します。
文責川上翔太
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