連載企画
【ボールのないサッカーのはなし #4】クラブが頼んでいないのに、できているもの
練習が始まる前、駐車場に車が並びます。
エンジンを切って、そのまま座っている方。降りて、少し離れたところで話している方。窓を開けて、隣の車の方と何か言っている方。
私たちはグラウンドの側にいるので、その様子は視界の端に入るだけです。
何を話しているかは、知りません。
天気の話かもしれないし、学校の話かもしれない。うちの子が最近どうだ、という話かもしれない。誰と誰が親しいのかも、正確には把握していません。
そこで決まっていることがあります。
今度の遠征、うちが二人乗せます。あの日は出られないので、お願いできますか。帰りは先に出ます。
乗り合わせは、こちらがお願いして始まったものではありません。駐車場で話がついて、あとから結果だけ伝わってきます。
こういうことも起きます。
忘れ物が届く。私たちが気づくより早い。休んだ選手の様子が伝わってくる。私たちが連絡するより早い。予定の変更が、こちらの一斉連絡より先に共有されている。
クラブの連絡網より、駐車場のほうが速いことがあります。
入ったばかりのご家庭は、はじめその外にいます。
どの車がどなたのものか分からない。声をかけていいのかも分からない。何度か通ううちに、駐車場での挨拶が少しずつ増えていきます。そこも、こちらが何かをした結果ではありません。
そして、この関係はクラブより長く続きます。
卒団してからも、その方たちは近所の人として付き合っていかれます。私たちがいなくなっても残るものが、送迎の時間のなかで育っています。
正直に言えば、少し不思議な感じもします。私たちが設計したものではないので、良くなっているのか、どこかで無理が出ているのかも分かりません。
ただ、そこに入っていこうとは思っていません。入れば、こちらの都合が混じります。
私たちが引き受けるのは、場所のほうです。
駐車場は、借りて使わせてもらっています。停め方、出入りの時間、近くにお住まいの方への配慮。ここが崩れれば、集まれる場所そのものが無くなります。関係は皆さんのもので、場所を保つのはこちらの仕事だと思っています。
ボールが動いていないところで、勝手に育っているものがあります。そこに目を向けておきたくて、今回にしました。
この問いを、一緒に考える仲間へ
クラブが用意できるのは場所までで、そこから先は皆さんがつくっています。
カシマアカデミーでは、子どもたちと地域のこれからを一緒につくる仲間を探しています。完成した答えを持っている必要はありません。私たちが大切にしていることに少しでも重なるものがあれば、まずは気軽にお声がけください。
同じ問いを持つ仲間と、明日も次の一歩に挑戦します。
文責川上翔太
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